相続登記義務化を勝手に考察
相続登記の義務化がスタート
令和6年4月1日から、相続登記の義務化が始まりました。今まで任意だった相続登記ですが、これからは相続人に相続登記の申請が義務づけられることになります。相続人に相続登記を義務づけることで、所有者不明土地問題の解決につなげたいというのが理由です。
この相続登記の義務化の内容については色々と情報が出回っていますので、この記事ではあえて割愛し(決して内容をまとめるのが面倒なわけではありません、たぶん・・・)、相続登記の実務に散々関わっている立場から、相続登記の義務化について勝手に考察してみたいと思います(何だか偉そうですみません)。
政府広報オンライン:相続登記の義務化 >
法務省:相続登記の申請義務化に関するQ&A >
相続登記が困難な事例とは
相続登記をするには、その前提として、相続人全員での話し合い(遺産分割協議)が必要になります。相続人の数が少なければ少ないほど遺産分割協議はまとまりやすいですし、相続人の数が多ければ多いほど遺産分割協議は難しくなります。
相続人の数が多い場合、一般的に相続登記は困難になります。
今後は減少する困難な事例
相続登記の義務化で今後減少すると思われる事例が、「数次相続」です。
数次相続とは、相続登記を放置している間に、相続人が死亡してしまい、複数の相続が発生している状態のことです。
数次相続が発生すると、相続人の数がネズミ算式に増え、相続人の間で「現住所が把握できない」「まったく面識がない」といった事態も生じ、相続登記をしようにも遺産分割協議ができないといったことが往々にしてあります。
また、相続人の数が少ない場合でも、数次相続の処理には高度な専門知識が必要になるため、一般の方では処理をするのが難しくなってしまいます。そして、時が経てば経つほど、更に難易度が高くなってしまいます。そのためどうすることもできずに、長年相続登記を放置していたという事例もよくあります。
相続登記が義務化されると、相続登記を放置することが減少するため、今後は数次相続が発生しているという状態の減少も予想されます。数次相続を理由に相続登記が困難になるという事例は、今後少なくなると考えられます。
※【業務ブログの紹介】たとえ相続人の数が少くても、一般の方にとって数次相続の処理は難しいという事例です
今後も変わらず困難な事例
数次相続は時の経過とともに相続人が増えるという事例ですが、時の経過とは関係なく元々の相続人が多いという事例もあります。
元々の相続人が多い場合の典型例が、『不動産所有者にお子様がいない』場合です。
『不動産所有者にお子様がいない』場合、不動産所有者の兄弟姉妹や甥姪が相続人になる可能性が高く、その場合、相続人の数が多くなる傾向があります。誰が相続人になるのかを理解するには、相続法の知識が必要ですが、この記事ではあえて割愛します(決して内容をまとめるのが面倒なわけではありません、たぶん・・・、きっと・・・)。
当事務所でも相続人が10人、20人いるような事案を常に抱えていますが、その全てが例外なく、この『不動産所有者にお子様がいない』場合です。
元々の相続人が多ければ、いくら相続登記が義務化されても、相続登記が困難であることに変わりはありません。
相続法の改正まで必要?
『不動産所有者にお子様がいない』事例を解決するためには、相続登記の義務化だけでは足りず、誰が相続人になるのかという相続法の改正まで踏み込む必要があると思います。
兄弟姉妹が相続人になるというというのはまだ理解できますが、甥姪まで相続人になるというのは、亡くなられた方との関係がさすがに遠すぎると感じます。親族関係が希薄になっている現代社会の実情とは合っていないと思います。「知らない人の相続人になっていた」というのは、わりと一般的にあることだと思います。
甥姪を相続人に含めないという相続法の改正があれば、相続人の数が膨れ上がるという事例も少なくなるはずです。
※【業務ブログの紹介】相続放棄の案件になりますが、「知らない人の相続人になっていた」という事例です
遺言の必要性
相続法の改正はあまり現実味がないので、現行の法律で『不動産所有者にお子様がいない』事例を解決する方法を紹介します。それはズバリ、不動産所有者が生前に遺言を残しておくことです。
遺言があれば、相続人全員での遺産分割協議を経ることなく、相続登記ができるからです。たとえ相続人の数が多くても、容易に相続登記をすることが可能です。
「遺言さえあれば、こんな面倒なことにはならないのに・・・」とは、いつも思うことです。
不動産所有者の責務
相続登記の義務は、あくまで不動産所有者の相続人に課される義務です。決して生前の不動産所有者に課される義務ではありません。
ですが、この相続登記の義務化を機に、ご自身の不動産の相続について考えてみてはいかがでしょうか。ご自身の死後、誰が相続人になり、誰が相続登記の義務を負うのか。
特に考えていただきたいのが、やはり『お子様のいない不動産所有者の方』です。遺言等の相続対策をしていなければ、ご自身の死後、相続人が相続登記をすることができずに困る可能性が大いにあります。
この解決困難な『不動産所有者にお子様がいない』事例の依頼をよく受ける司法書士の立場からは、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、ご自身の不動産の行く末について考えることは、不動産所有者の責務ではないかとすら思います。未来の相続人のために、ぜひご自身の不動産の相続について考えてみてください。
※【業務ブログの紹介】お子様のいない方の相続対策の一例です
相続登記の無料相談
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