遺贈寄付を伴う遺言執行

今回は遺言執行のご依頼
札幌市北区のT様(60代 女性)から「今度はおばの相続手続きをお願いしたいんです」とお電話をいただきました。T様は数年前、地方にお住まいだったお父様の相続手続きで当事務所をご利用くださったお客様です。お話を簡単に伺ったところ、状況は次のとおりでした。
- 2週間前におば様がお亡くなりになった
- おば様の相続人はT様を含め3人(T様から見ていとこ同士、おば様から見て甥姪)
- おば様は生前に公正証書遺言を作成し、その中でT様を遺言執行者に指定している
今回のご依頼は、札幌で行う遺言執行です。おば様の想いを確実に実現するための大切な手続きになります。
ご自宅での面談と遺言書の確認
後日、T様のご自宅に伺い、遺言書を一緒に確認しました。そのおおまかな内容は次のとおりでした。
- すべての財産を換価する(財産をお金に換えるという意味)
- 金○○円を甥姪3人それぞれに均等に相続させる
- 残金すべてを、ある教育機関に遺贈する
教育機関に遺贈する金額をここで具体的に申し上げることはできませんが、数千万円規模という、たいへんまとまった金額です。そして、今回の遺言には、いわゆる「遺贈寄付」が盛り込まれていることになります。
遺贈寄付とは?
遺贈寄付とは、遺言によって財産の一部または全部を公益団体や自治体、教育機関などに寄付することを言います。札幌でも近年、この遺贈寄付を希望される方は増えており、社会貢献の方法として注目されています。
T様によると、おば様は教育関係の仕事に携わっており、「最後は子どもたちのために使ってほしい」とよく話していたそうです。
遺贈寄付の詳しい説明については、下記をご覧ください。
委任状への署名押印と業務開始
遺言執行者であるT様には後日、遺言執行に関する委任状へ署名・押印をいただきました。これにより、「遺言執行者からの委任」を受けた司法書士の西野が、遺言執行者の代理人として具体的な業務を開始することができます。
遺言執行者の役割
遺言執行者は、遺言に書かれた内容を忠実に実現する責任を負う存在です。相続人や受遺者への連絡、遺産調査をはじめ、相続財産の名義変更や解約、さらには金融機関での各種手続きなど、一連の業務を進めていくことになります。業務は多岐にわたり、丁寧かつ確実な対応が求められます。
特に遺贈寄付を伴う遺言執行の場合は、寄付先となる団体や自治体との連絡・書類調整、金融機関の対応、相続税申告のための税理士との連携など、複雑な工程が同時並行で発生します。そのため、経験豊富で法律知識を持つ専門家の関与が欠かせません。
T様は遺言執行者に指定されたものの、「これはさすがに自分では難しい…」と感じたそうです。そんなとき、数年前にお父様の相続手続きを依頼した司法書士の西野のことを思い出し、「ぜひまたお願いしたい」と思いだしてくださったそうです。「ちゃんと仕事をしておいてよかったぁ」と西野が心の中で思ったのは言うまでもありません(笑)。
相続人と受遺者への通知
まず、相続人3人と受遺者となる寄付先の教育機関に、遺言書のコピーとともに任務開始の通知を郵送しました。
必要ないのかもしれませんが、教育機関には書面到着後に電話もしました。教育機関の担当者様は、「寄付をいただくことはあるのですが、こんなに大きなご厚意は初めてです。驚きもありますが、うれしさと感謝の気持ちでいっぱいです」と、その声からは、思わぬ知らせに戸惑いながらも、うれしさがにじみ出ているのが感じられました。
遺産調査と財産目録作成
遺産全体を確認するため、T様からお預かりした金融機関の通帳やカード、関係書類をもとに遺産の調査を行いました。その中には、ある証券会社から届いた郵便物も含まれていました。面談の際、T様は「おばは生前に不動産を処分したり、証券会社の口座も解約したりして、財産を整理していたはずなのですが…」と少し不安そうに話されていました。
調査の結果、その証券会社の口座には資産がないことが判明しました。窓口で対応してくれた担当者様は、おば様が生前に取引していた際の担当でもあったそうで、「(おば様は生前に)『財産を整理する』とお話しされていましたよ」と教えてくれました。まさに、T様がおっしゃっていた通りの状況でひとまず安心しました。
そして、遺産調査を終えたところで、最終的な財産目録を作成しました。調査の結果、遺産は3つの銀行口座が中心であることが確認され、その内容を相続人および受遺者に郵送しました。
遺産の集約・分配と遺言執行の完了
その後、各金融機関で解約手続きを行い、解約金を遺産預り口座へ集約しました。相続人3人へ均等に分配し、当事務所の報酬や遺言執行に伴う諸費用を差し引いたうえで、残金すべてを教育機関の指定口座へ入金しました。
教育機関への入金にあたっては、事前に寄付申出書などの書類を提出する必要がありました。金額が大きかったこともあり、教育機関内部でも多くの確認や手続きが必要だったようです。
すべての手続きが終わり、相続人および受遺者に事務報告書とともに遺言執行完了の通知を郵送しました。
これで、おば様の想いを実現する遺贈寄付を伴う遺言執行はすべて完了ということになりました。
教育機関からの感謝状
後日、T様からメールが届きました。教育機関から感謝状が届き、おば様の写真の横に飾ったとのことです。感謝状には、寄付金が教育分野の充実や子どもたちの学びの環境整備に役立つこと、そしておば様の生前の想いが多くの人々に受け継がれることへの感謝の言葉が記されていたそうです。T様はその文面を読みながら、おば様と過ごした日々や、教育現場で懸命に働いていた姿を思い出し、胸が熱くなったそうです。
私たちとしても、おば様の想いを未来につなぐお手伝いができたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。こうした仕事を担当させていただくと、「ああ、司法書士になってよかったなぁ」と改めて感じます。おば様の崇高な想いの実現に関わらせていただいた者として、そのお気持ちを胸に、これからも一つひとつのご依頼に真心を込めて丁寧に取り組んでいきたいと思います。
札幌で遺贈寄付や遺言執行をお考えの方へ
遺贈寄付は、財産や想いを未来へとつなげる人生最後の社会貢献とも言われています。しかしその実現には、法的な知識や手続きの正確さ、そして関係者との丁寧な調整が欠かせません。
当事務所では、札幌での遺贈寄付や遺言執行に多数の実績があります。相続人や寄付先への連絡、金融機関や税理士との連携まで、すべてワンストップで対応可能です。
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そんな方は、どうぞお気軽にご相談ください。お一人おひとりの想いを大切に、確実な手続きと心のこもったサポートをお約束します。
相続対策や相続手続の無料相談
当事務所では、相続対策(遺言書作成、生前贈与など)や相続手続(銀行口座の解約、相続登記、遺言執行など)の無料相談を随時実施しています。
遺言書がある場合には、T様のように遺言執行を全面的に委任することもできますし、遺言執行の一部だけを委任することも可能です(例えば、銀行口座の解約だけ依頼する、有価証券の現金化だけ依頼する、相続登記だけ依頼する 等)。
また、遺言書がない場合には、相続手続き「まるごと」サポート(※)という相続手続きの一括代行も行っていますし、相続手続きを個別に代行することも可能です(銀行口座の解約だけ依頼する、有価証券の現金化だけ依頼する、相続登記だけ依頼する 等)。
(※)相続手続き「まるごと」サポートとは、当事務所が行う相続手続き一括代行サービスのことです。詳しくは、以下をご覧ください。
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