総勢19名の相続人による相続登記・相続手続き

最終更新日:2025.08.22
お兄様の相続手続きの相談
札幌市南区のH様(80代・男性)より、「どうにも先が見えなくて…」と、お兄様の相続手続きについてご相談をいただきました。当初はどこに相談すればよいのかわからず、地域包括支援センターで事情をお話しになったところ、当事務所をご紹介いただき、このたびご来所くださいました。
7人きょうだいの末っ子
H様は道北のX町のご出身です。7人きょうだい(男性5人・女性2人)の末っ子で五男にあたります。
その一つ上のお兄様(四男)が、1か月ほど前にX町で亡くなられました。お兄様にはお子さんがいなく、他のきょうだいはすでに全員他界しています。相続人はH様のほか、甥や姪に広がっていきます。
「きょうだいはもう誰もいないので、兄の相続手続きは私が中心になって進めるしかありません」
「私以外は、甥や姪が相続人になるのはわかるんです」「中には自分より年上の甥や姪もいます」「おおよその顔ぶれは想像つくのですが、はっきりはしなくて…」
X町で行った葬儀には何人かの甥姪が参列してくれたものの、相続人全員を把握するのは容易ではないようです。お兄様の遺産は、X町の戸建住宅(土地と建物)と銀行口座3つです。
「家は古いので、売るか解体するしかないと思います。預貯金は特に欲しいわけではないのですが、不動産についてはその後の処理を考えると私の単独名義にしておきたいんです」
ごきょうだいの中で唯一ご存命なのはH様お一人であるため、そのお言葉からは「兄の相続手続きだけは何としてもやり遂げたい」という強い責任感が伝わってきました。
相続人の確定
H様のご意向を受け、『相続手続き「まるごと」サポート』で、当事務所がお兄様の相続手続きを一括代行することになりました。
まずは相続人を確定するため、戸籍謄本の収集から着手しました。お兄様やH様のお父様・お母様の出生時の戸籍までさかのぼる必要があり、さらにお父様が再婚されていた事情もあったため、収集する戸籍は多岐にわたりました。最終的には戸籍や附票を合わせて92通にのぼり、約2か月をかけて道内外にお住まいの相続人を特定することができました。
結果、相続人は総勢19名いることが判明しました。X町やその近郊、札幌や札幌近郊に住む方が多いものの、東京など本州在住の方も数名いらっしゃいました。
相続関係説明図や相続人リストを作成し、H様と改めて面談しました。
「連絡先が分からない人もいますが、間を介せばおそらく何とかなりそうです」とH様はおっしゃり、相続手続き完了への道筋に少し光が差したように思われました。
“根回し”の重要性
相続人が多数いる場合、見知らぬ司法書士からいきなり書類が届くと、警戒される可能性が大いにあります。そのため、当事務所ではまず“根回し”することを重視しています。
H様には可能な範囲で相続人へ「司法書士から書類が届く」と事前に声をかけていただきました。その上でまずは相続関係説明図・相続人リスト・法定相続分についての説明文などとともに、「相続手続に関する回答書」というアンケート形式の書類を郵送しました。内容は、遺産分割協議案のご説明です。
- 不動産については、H様が相続する
- 預貯金については、相続人全員で法定相続分通り分配する
H様の「預貯金はいらない」というご意向を尊重しつつ、相続人の方々には法定相続分での受け取りを提案することで、協力を得やすい環境を整えました。
遺産分割協議書への押印
相続人全員から「遺産分割協議書案のとおり協力できる」との回答をいただけたことを受け、次に遺産分割協議書を作成し、相続人全員に郵送しました。あわせて、実印での押印と印鑑登録証明書の返送をお願いしました。
ご高齢で印鑑登録をされていなかった相続人の方のために、わざわざ札幌からX町まで出向いて印鑑登録を済ませてくださったご家族がいたり、「自分の相続分はおじさん(H様)に譲りますよ」と言ってくださる方がいたりと、多数の相続人がいらっしゃるにもかかわらず、相続人の皆様の間には一体感のようなものが感じられました。
甥や姪の方々のお気持ちとしては、唯一のごきょうだいであるH様に財産を受け取ってもらいたい、また唯一ご存命のおじさんであるH様のために協力したいという思いであることがうかがえました。
相続登記と法定相続情報の作成
最終的に、相続人全員から遺産分割協議書と印鑑登録証明書の返送があったため、具体的な相続手続きを進めることが可能となりました。そこで、まずは法務局にて相続登記を行うとともに、法定相続情報を作成しました。
なお、法定相続情報については、一般的によく用いられる家系図形式ではなく、相続人が19名にも及ぶため、A4用紙数枚に収めやすい列挙形式(リスト形式)で作成しました。
預貯金の解約
相続登記完了後、3口座の預貯金を順次解約しました。この際、法務局で作成した列挙形式の法定相続情報を活用したことで、92通にも及ぶ大量の戸籍謄本を金融機関に提出する必要がなく、手続きは大幅に簡略化されました。その結果、預貯金の解約は非常にスムーズに進み、解約金は当事務所の遺産預り口座へと集約しました。
実務的には、法定相続情報の活用は金融機関からも大いに歓迎されるものであり、むしろ専門家であれば当然利用すべきものといった、半ば義務のような雰囲気すらあります。
一般の方であればまだしも、専門家が92通もの戸籍謄本をそのまま窓口に持ち込んだとしたら……おそらく担当者から冷たい視線を浴びることになるでしょう(笑)。
分配金の計算
解約した預貯金は、遺産分割協議書に記載されているとおり、相続人全員に法定相続分で分配する必要があります。相続分の割合は、5分の1、60分の1、40分の1、15分の1、10分の1……といった具合で、面倒な計算を何度も繰り返し確認することになりました(異母きょうだい、いわゆる“半血兄弟姉妹”がいらっしゃったことで、計算は複雑さを増しました)。
まるで小学校の算数ドリルを思い出すかのようで、途中で「本当に合っているのだろうか?」と何度も自信を失いながらも電卓と格闘した結果、最終的には正確な分配金額を算出することができました。
解約金の分配
解約金を分配するにあたり、相続人19名分の振込依頼書をあらかじめ記入し、遺産預り口座のある金融機関の窓口へ提出しました。依頼書の束は、まるで小冊子のようで、窓口の職員の方も思わず「これは…なかなかの数ですね」と苦笑いされていました。
一枚一枚確認しながらの作業となりましたが、職員の方のご協力もあって、法定相続分に基づき、19名それぞれの指定口座へ無事に振り込みを完了することができました。ようやく作業を終えた時の安堵感は格別でした。
相続手続きの完了
その後、相続人全員に完了書類を郵送し、これをもってすべての相続手続きが無事完了となりました。
なかでも、H様へお返しする書類は、92通もの戸籍謄本をはじめ、さまざまな書類の原本を含む膨大な量になりました。さすがに事務所で手渡しできる量ではなかったため、段ボールにまとめて郵送でお届けいたしました。
親族の温かなご協力
完了書類が届いたあと、H様から改めてお電話をいただきました。
「自分ひとりでは到底できませんでした。甥や姪も皆協力してくれて、本当にありがたいです」
「これからは不動産の処分をしなくてはなりませんが、X町にいる親族の協力を得ながら進めていきます」
総勢19名もの相続人による相続登記・相続手続きは、まさに大仕事でした。途中には戸籍集めや連絡調整など、数え切れないほどの段取りがありましたが、最後まで進めることができたのは、H様の誠実なお人柄、そして「H様のために力になりたい」という相続人お一人おひとりの温かなご協力のおかげでした。
無事にすべてを終えたとき、単に相続手続きが完了したというだけでなく、ご家族の絆や支え合いを深く実感できる案件となりました。
相続登記・相続手続きの無料相談
当事務所では、相続登記や相続手続、相続対策、各種登記についての無料相談を随時実施しています。
そもそも相続人が誰だかわからない、相続人と音信不通・疎遠、相続人が行方不明、相続人が海外にいる 等の場合にも、ぜひご相談ください。それぞれにつき解決実績があります。
H様のように相続人が多い場合や、相続手続きが複雑で不安に思われる場合でも、どうぞ安心して当事務所へご相談ください。段階を踏みながら、ひとつひとつ丁寧にサポートさせていただきます。
また、当事務所ではお忙しい方や外出が難しい方のために札幌市全域・札幌近郊への無料出張相談も行っています。無料出張相談の理由 >
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